ふくろうブログ

2002.09.01 ふくろう通信

一木こどもクリニック便り 西暦2002年9月(通算69号)

朝晩少しずつ涼しくなり、山の木々も秋めいてきました。運動会の季節です。栗や柿や秋の味覚もどっさり。水が冷たくなってくると、お魚料理も美味しくなります。朝から晩まで、食べて、眠って、遊びまくる日々の中で、チビッ子たちは、どんどん背が伸びます。子どもたちは成長しているのですね。大人は横に成長するばかりですが。

こどもの病気の診かたと看かた(86)輸入感染症について

アメリカ合衆国で、西ナイルウイルス病というアフリカ原産の病気が大流行しています。このウイルスは、日本脳炎ウイルスの仲間で、蚊が媒介します。脳炎を起こして死亡することもあり、重症な病気の一つです。

もともとウガンダで発見されたウイルスですが、3年前から米国東海岸で流行が始まり、感染した渡り鳥がウイルスの運び屋さんとなって、中西部や南部にも拡大したとか。来年は、日本人旅行者が多い西海岸にも飛び火する危険性があるとのことです(9月26日付の毎日新聞朝刊より)。

西ナイルウイルス脳炎などの地域的な風土病は、流行地に行った人がうつされるものでしたが、旅行先でうつされるだけでなく、渡り鳥や輸入ペットなどによって病原体が持ち込まれることもあります。つまり日本国内にいても、思いがけない病気になってしまう危険性があるわけです。

在来の病気ではなく、外国から持ち込まれた病気を輸入感染症と呼び、国立感染症研究所のHP(http://www.nih.go.jp)などで閲覧できます。

米国では、西ナイルウイルス脳炎の他にも、数年前話題になったエボラ出血熱など、輸入感染症によって多くの犠牲者が出ていますが、同じ危険性は日本でも十分にありますね。外国ブランドが好きな方ご注意を!

こどもの病気の診かたと看かた(87)旅行に持っていく薬

行楽シーズンです。ちょっとした旅行でも、とちゅうで体調をくずしたら大変。そこでお薬を持っていくことにしたのですが…。

知らない土地では食あたり、水あたりがこわいし、乗り物酔いも心配、いや咳や鼻水もそれなりに厄介、といろいろ考えていたらどこにも出かける気がしなくなった…。でもここでくじけては週末がもったいない。
イザというときに一番役に立つのは痛み止めです。旅先で突然の痛みは、それが歯痛、腹痛、頭痛を問わず、大変な不安をもたらします。

痛み止め薬の多くは、熱さましの作用も持っていて、発熱にも対応できます。解熱(げねつ)鎮痛(ちんつう)薬と呼ばれます。日ごろから、大抵の痛みに効く、自分に合う鎮痛薬を一つ見つけておくと重宝します。

鎮痛薬でとりあえずしのいだとしても、痛みは、何か重大な病気のサインであることが多いので、続く場合やくり返す場合には、余裕のある時に医療機関を受診して、根本的な治療を受けるようにしてください。

こどもの病気の診かたと看かた(88)クリームと軟膏

アトピー性皮膚炎や虫刺されなど、いろいろな皮膚の病気に対して、軟膏やクリームをどのように使い分けているのか、時々質問されます。

革靴の手入れには軟膏でなく、クリームを塗りますね。クリームは親水性ですから、塗ると革の中から水分(汚れを含む)を吸い出します。つまり汚れが浮き出てくるので、布でふき取れば汚れがとれるのです。

赤ちゃんの皮膚は、水っぽくてプヨプヨしています。それに表皮が薄く、表面だけは乾燥してガサガサのことが多い。そこにクリームを塗ると、薄い表皮を通して水分が吸い上げられ、乾燥が進むことになります。

軟膏を塗ると体温で溶けて、皮膚の表面に薄い保護膜を作ります。乾燥性の湿疹に対しては保湿作用のある薬が良く、軟膏が適しているのです。

ジュクジュクとただれた湿疹にも軟膏が適します。クリームでは、ただれ面の汚い液が吸い上げられて周辺の正常な皮膚に撒き散らされ、湿疹の拡大が起こることがあります。だいたい赤ちゃんには軟膏ですね。

虫刺されなどで皮膚全体が丘のように盛り上がることがあります。これは表皮の下にアレルギー性の浮腫(水ぶくれ)が生じているわけで、ステロイドや抗ヒスタミン剤のクリームを塗るとすみやかに腫れがひきます。

あとがき

飽食の国のスマート首相と飢餓の国の“太っ腹”主席との首脳怪談。9.11がアメリカ合衆国にとって忘れえぬ日になったと同じく、9.17は日本国民にとって永遠に忘れることのできない1日となりました。異国で悲嘆のうちに亡くなられた同胞のご冥福を祈ります。ご家族の痛切な悲しみ憤りの思いを分かち合いたいと思います。

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