研修医1年目の時、担当の小児患者さんに放射線治療を受けてもらうことになり、放射線科部長γ教授の外来受診に付添いました。
私:先生よろしくお願いします。早速ですが、照射計画のご指導をお願いいたします。それであのう、ご家族が放射線被爆について大変ご心配をしておられるのですが…。
γ:君イ、被爆だなんて人聞きの悪いことを言わんでくれよ。1回に照射される線量というのはだね、大濠公園で小便をするようなものなんだ、分かるかね。
私:は、大濠公園で小便ですか?分かりませんのですが。
γ:不勉強だね。いいか、大濠公園で小便をしたとする。どれだけ池の水位があがったか、君わかるかね?
私:は、水位がですか、すいません、分かりません。
γ:分からんだろ、わしにも分からんよ。つまり放射線が少々かかったと言ってもそんなものなんだよ。
私:は、良く分かりました。大した問題ではないわけですね。
γ:それが早合点というものだ。確かに水位は変わらん、見た目には分からん。では水量はまったく増えてないかと言うと、そんなことはない。小便1回分だけ間違いなく増えているはずだろ?
私:はい、確かに1回分増えると思います。
γ:そこなんだよ、君、放射線被爆の問題というのは。1回では分からん程度でも、確実に照射した分だけ増えているのだ。良く分かっただろう。家族にちゃんと説明してやってくれよな。
私:(半泣きで)は、家族に良く説明しておきます。ありがとうございました。
その日、家族にどんな説明をしたのかどうもはっきりしません。
しかし、今でもレントゲン撮影のたびにこの会話を思い出します。