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6歳児の意味

多くの国では、6歳に達すると小学校に入学します。成長曲線では、この年齢は、直線状に身長が増加していて、一見すると変化の少ない、無風のように見える時期ですが、からだの中では眼に見えない大きな変化が進行しています。

からだをコントロールしていく上でもっとも大切である、大脳の機能がほぼ完成するのが、5~6歳頃といわれています。入学前後で比較すると、この時期に、こどものからだに起こっている変化がよく分かります。

①”かぜ”をひきにくくなる。寝冷えをしにくくなる。
②周期性嘔吐症(自家中毒)や低血糖などの代謝異常が減ってくる(ストレス耐性の獲得)。
③熱で”ひきつけ”やすいこどもでも6歳を境に熱性けいれんを起しにくくなる。
④インフルエンザにかかったときに、合併症の急性脳炎・脳症を起すのは5~6歳未満に多い。
⑤扁桃(へんとう)は7歳で最大に、アデノイドは6歳で最大のサイズになる。

もちろん、不利な面が減るばかりでなく、6歳を境に、有利な面も失われます。

① 6歳未満のこどもの脳は復元力(元に戻る能力)が高く、事故や病気で脳に相当なダメージを受け、脳波上は”脳が機能していないのではないか”と思えるようなケースでも、わずかな後遺症だけで回復してきた例や、まったく元どおりに回復した例があるとのことです。

② 絶対音感や多くの外国語を習得できる可能性は6歳頃まで残るといわれています。 もちろん、中学校に入ってから外国語の勉強を開始しても、不自由しない程度に使えるよう にはなります。しかし母国語と同じように使えるためには、その言葉で思考する必要があり、 思考方法を規定する言語はただ一つしかないと考えられています。つまり、ふつうでは、母 国語は一つなのです。音楽についても、天才は例外なく絶対音感の持ち主といわれています。

ちなみに、成熟したチンパンジーの知能指数は人間に換算すると、6歳児相当ということですから、幼稚園までのこどもさんは、かなりカシコソウに見えても、親チンパンジーにはまだかなわない、というわけです。

さて、以上のことを大脳生理学的にながめ直すとどうなるでしょうか。人間の脳には、神経細胞のネットワークが急激に増える時期が4回あるといわれています。

   生後3~10か月 (くびが坐る頃から、独り立ちまで)
   2~4 歳 (成人文法性を獲得する時期、三つ子の魂)
   6~8 歳(基本的な生活習慣を身に付け、同年齢、あるいは異なる年齢 のこどもと、遊びの乱取りげいこを始める時期)
   10~12 歳(自分というものに気付き、親をも相対的に見始める時期)

人間としての大きな節目となるこのような時期に一致して、あるいはそれに少し先んじる形で、脳細胞のネットワークが形作られているわけです。

パソコンに新しいソフトを、ご自分でインストールされた経験をお持ちの方も多いと思います。例えば、ウィンドウズ98という基本ソフトをパソコンに組み込むと、長い時間のあとに「ウインドウズはセットアップを完了しました」というメッセージが画面に現れます。セットアップ完了とは「使える用意ができましたよ」ということ。

人間は、大体6歳頃にセットアップが完了する動物である、と言えます。 幼稚園・保育園の頃には毎月どころか、毎週のように病気をしていたこどもさんが、入学後は、不思議なくらい病気をしなくなります。入学する6歳に達して、初めて、いろいろな意味で、誰もがスタートラインに立てたと言えるのでしょう。

つまり、入学までは病気をするのは仕方がない、こどもというものは、病気をくり返し経験して成長するものだ、と思っていたほうが、精神衛生的にも楽です。 だからこそ、からだの方も、扁桃(口から侵入する病原体を食い止める)や、アデノイド(はなから侵入する病原体を止める)という見張り番を用意してくれているのです。病気をしても悲観しないように。コジレなければよし、と考えましょう。

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