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精神の病の映画について

連休中に、「ビューティフルマインド」というアメリカ映画を観ました。
天才的数学者が、大学院生のときに精神分裂病(現在は、統合失調症という病名)を発症し、病気と闘いながらも「均衡理論」という画期的な学問を組み立て、1994年ノーベル賞に輝くまでの実話にもとづく物語です。

統合失調症に特徴的な、がんこな妄想(もうそう)に主人公はとりつかれます。その内容は他者にはまったく了解不能ですが、本人にはそれが病気であるという認識(病識)がまったくなく、他人にはどれほど不条理な内容であっても、妄想どころか、本人にとっては現実そのものなのです。

したがって理性でコントロールするという試みは通用しません。

映画では、インスリン昏睡(こんすい)療法(低血糖を人工的におこさせて昏睡状態にさせる)や、電気けいれん療法などの場面があります。有効な抗精神病薬のあいつぐ出現で、インスリン療法は廃れてしまいました。一方の電気けいれん療法は、米国などで現在でも実施されています。

今日では、多くの有効な抗精神病薬の登場で、統合失調症の患者さんが半永久的に閉鎖精神病棟で過ごすという時代は過去のものになりました。外来通院をしながら家族や他者とともに人生を過ごす患者さんが増えています。それは医学の進歩がもたらした大きな恩恵だと思います。

精神が分裂してまったく別の人格になったのではなく、同一人格の中で、全体を統合しているメカニズムがうまく働かない(失調状態)ためにおこるさまざまの社会的不適応、それが統合失調症という新しい病名に表されています。この病気もまだ本当の原因は解明されていません。

精神の病気に対するさまざまの偏見をとりはらうためにも、多くの方々に「ビューティフルマインド」を観てもらいたいと思います。

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