2月と3月は、大変に困難な季節でありました。昨年秋に偶然、血尿で気づいた腎結石が、バレンタインの日から徐々に尿管を下り始め、3月22日夕刻に体外に排石されるまで、激痛か鈍痛か、どちらかが必ず襲うという日々を過ごさざるを得なかったからです。
石狩川をさかのぼる鮭でもなく、筑後川からフィリピン海溝へ下るウナギでもなく、オホーツクの海底で目覚め、東京湾を目指すゴジラのように、それはズシーン、ズシーンと私の尿管をゆっくり降りてきました。リストのハンガリー狂詩曲1番がBGMに鳴り響いています。ハシカ、プール熱、インフルエンザの高熱にも、嘔吐下痢症や食中毒の腹痛・嘔吐・下痢にも、椎間板ヘルニアの痛みにも耐えてきた私ですが、今回は比較にならない痛み。石飼い病院に入院時は意識もうろうとなっておりました。
腹部エコーではキラっとダイヤモンドのように光って見えたので、「バカラ」のクリスタルか、「ホヤ」のクリスタルくらいにきれいな石であろうと期待しました。この痛みに耐えれば宝石が手に入ると確信しておりましたが、それが産まれてきた瞬間に、「ナンヤ?」と思いました。宝石どころか、黒くて、かじりかけの金平糖のようにギザギザして、何ともみにくい石でありました。それでも・・・。
デパートの宝石売場にあるどんな立派な宝石よりも、私のみにくい石は貴重で大切なものです。いつも他者の痛みを忘れないようにと、それは神様が与えてくれたいましめなのかも知れません。欲望を押さえるために、いつも石で自分のからだを打っていたと伝えられる聖ヒエロニムスのように、次の石がすでに準備されているのかも知れません(恐ろしい)。
早朝から順番とりに並ばれたお父さんお母さん、またお祖父ちゃん、お祖母ちゃん方に、突然の休診や診療中断を告げざるを得なかったことを心からお詫びいたしたいと思います。 もっと自分の健康管理に注意して休診騒ぎを起さないように努めますのでご寛容ください。