残暑の中に秋の気配を感じるようになってきました。エアコンを使うときには、部屋を閉めきらず、わずかでも、廊下やとなりの部屋との間を開けておいた方が健康には良いです。
こどもの病気の診かたと看かた(27)喘息(ぜんそく)について
「そろそろ秋の喘息シーズンとなります。気管支喘息は、きちんと理解して対応すれば、コントロールできる病気ですが、子どものはそのうち治るからと、発作の時だけの治療をくり返しているとなかなか治りません。
治る見込みがあるのは、成長している間だけです。身長が止まった後も発作がでる人は、治りません。
全国では、小児100万人、成人300万人の喘息患者さんがいると推定されています。それでは、小児喘息100万人の運命はどうなるのでしょう?
大体3つのコースに別れます。
①60%、60万人は、成長停止までに自然に、寛解(かんかい)します。 寛解とはなんかいな? いつしか症状がでなくなることです。 「そう言えば、ここ数年発作がでな いねえ、ひょっとしてもう治ったのかな?」というような感じです。
②20%、20万人は、いったん寛解しますが、成人になってから再び喘息発作を起すようになります。すっかり良くなったように見える期間が10年、それ以上続くこともあります。
③残り20%、20万人は、寛解というものがないまま、発作のある状態で成人になります。
つまり、小児喘息100万人のうち、合計40万人が成人喘息に移行することになります。成人患者さんは、300万人ですから、差引260万人は、成人になってから初めて喘息発作がでるようになった方々と言えます。
なぜ成人になって喘息を起す人が増えるのか?この「なぜ?」に正確に答えることは、実はとてもむずかしい。 そもそも喘息が「なぜ」起こるのか、それが未解決なのです。
個々の患者さんで観察していくと、喘息の本当の原因を明らかにすることはむずかしいことが多いのです。いっぽう、喘息を悪化させたり、発作を長引かせたりする因子についてはかなりハッキリしています。
「なぜ」を問うよりも「悪化させないためにこれからどうしたら良いか」を問う方がプラス思考でしょう。
喘息の悪化を防ぐには、日常生活の中で、以下のことに特別の注意を払いつづければよいのです。
ゴミ・ホコリ・煙・花火・線香・スプレー・化粧品などをなるべく吸わない・吸わせない、
ペットは飼わない、 運動や激しい呼吸に注意し、
天候の変化には常に気を配り、
添加物の多い食品をなるべく控え、
アルコールをつつしみ、
いつも平静な気持ちで過ごし、 ストレスを溜めず、
うれしいこと、悲しいことがあっても 感情を抑えて、けっして興奮せず…
アレッ?何だか宮沢賢治の詩みたいだなあ、と思った方はいませんか?
わては、そんな息のつまる生活はいやや。
毎日そこまで気い使わんと生活でけへんのやったら、苦しい発作でもかまへん。
どうせ短い人生や。面白おかしう好きなことして、
パアーっと花火のように散ったほうがマシやねん。あんた、そない思わへんの?
そう思う方はごく普通の健康な方でしょう。私でもそう思うのですから。
しかし、そう思う方は、きっと喘息の大発作を経験したことのない方だと思います。本当に息のつまる経験はないはずです。
私の長男、次男はともに大発作を経験しているのですが、どちらもあんな苦しいのは二度とイヤだと言っております。だからこそ、文句言いつつ、毎日ステロイド吸入を続けているのです。思春期を過ぎても発作を起す場合は、そうせざるを得ないのです。
こどもだけが努力すれば良いのではありません。私も禁煙しました
目の前で煙りを出さなくても、普段の吐息が刺激になるらしく、喫煙していた頃は、日常的に咳き込んでいたからです。小児科医なのに子どもの病気を治せないどころか、何と加害者だったわけです。ざんげの至り。
ところで、思春期前のこどもでは、治る見込みがあります。ただ、治ったと確信を持つためには、少なくとも2~3年間は、発作のない状態を過ごしてからでないと言えません。
それに思春期前の喘息では、吸入ステロイド剤を使わずとも、キサンチン製剤(テオドールなど)、抗アレルギー薬、インタール+気管支拡張薬の定期的吸入、などの組み合わせで、3年以上発作なし→いちおう治癒とみなす、というケースも多いのです。 最近は気管支拡張薬の貼り薬もでました。
どのような治療を受けるにせよ、忘れてはいけない大原則は、 発作のない時にも、発作を引き起こした、気管支の慢性炎症(まんせいえんしょう)は続いている、 ということです。
慢性炎症に対抗できるのは慢性治療しかありませんが、見通しなくだらだらやってもだめ。それはマンネリ治療。計画的な治療戦略が大切です。
思春期終了(高2頃)から3年引いて、遅くとも中学校の半ば頃までには、喘息発作とのおさらばを目指す。その後も定期的に観察を続け、3年間まったく発作がなければ治ったと見なす。これがその治療戦略です。