ふくろうブログ

2001.04.01 ふくろう通信

一木こどもクリニック便り 西暦2001年4月(通算52号)

GWも近いのに、寒暖の差が大きくて体調の悪い患者さんが減りません。花冷えの季節は鼻も冷えます。赤ちゃんの症状でいちばん多いのがハナづまり。2個しかない小さなハナの穴が両方つまってブヒブヒと哺乳も上手にできません。その小さな鼻孔をカテーテルで吸引しながら、「おハナが通ってお母さんに安眠してもらおうね。」とつぶやく毎日です。

こどもの病気の診かたと看かた(48)慢性の病気への対応

前号で、こころの悩みには2段階の対応が必要であることをお話しました。
慢性の病気も同じく2段階で対応します。
慢性の病気は、火山活動で考えると理解しやすいのです。

①噴火のとき(=急性症状がでている時、発作時、急性増悪時)の対応
とりあえず、噴火を沈静させるために最大限の努力をする。

糖尿病、甲状腺機能亢進症、痛風、高血圧症、高脂血症…。
(医学用語は難解な漢字が頻出して恐縮です。)

これらの病気はいずれも、それまで何の異常も感じられなかった人に、突然の発病という形で表面化することがあります。あたかも急性疾患のように見えますが、そこに至るには長い時間的な伏線があるのです。

注意すべきは、「なぜか?」を問わないこと。
問題解決には役に立ちません。

・またイヤシ食いしたと?薬(あるいは、インスリン注射)は忘れてからに! (糖尿病の子どもへの親の言葉。もっとも傷つける結果になる。また夫婦のどちらかが糖尿病の時にも、配偶者によるこの言葉は避けるべき。)

・日曜ごとに家をあけてゴルフとビールばっかりやけん、そげんなるとよ! (痛風の発作に泣く夫への妻の言葉。ラウンド中の冷たいビールは痛風発作の引き金になります。血液中の尿酸値が高い方は注意しましょう。)

苦しんでいる時には、誘因は後で考えればよく、まずは楽にさせるべきです。

②噴火していない日常時(非発作時、安定時)の対応
次の噴火を予防するように努力。具体的には日々のパトロールをていねい にして、噴火を予知する。病気では何をすれば良いでしょうか?

定期検診をまじめに受ける → 症状がなくても健康チェックを。日頃から肥満度、血圧、脈拍、コレステロール、血糖値などを把握しておく。

規則的で清潔な生活の維持 → 起床時間、睡眠時間をなるべく一定にして、入浴や適度の運動を欠かさない。できれば食事や散歩の時間も一定にする。

飲む・打つ…を抑える → タバコ、アルコール、コーヒー等の嗜好品や賭け事、レジャーも度が過ぎると、不健康な生活習慣をくり返すことになり、結局はどこかでダウンして、他人まで巻き込むことになります。

こういう風に説明しますと、「センセイ、ワテは聖人君子やおまへんね。そんな窮屈な人生より、太く短くパーっと散った方が家族にも迷惑かけんで済むんとちゃいますやろか?健康管理なんてまっぴらや。あんましおどかさんどいて欲しいわ。」なんて言われそうですが…(どこのオッチャンやろ?)。

確かに、慢性の病気には遺伝や体質的素因など、生まれたときから決まっていて、どう努力しても本人にはどうしようもない要因も存在します。

しかし、のがれるすべのない疫病の流行などと異なり、慢性病では自己管理責任(患者さんがこどもの場合は保護者責任)を忘れるべきではありません。やはり、時には無茶が許されるとしてもホドホドにとどめるべきでしょう。

「なぜか?」を不問に付して対応してもらえるのは、あくまで急性期だけであり、体調の良いときには自己責任において、病気をコントロールするように、個人としてできる限りの努力をしなければなりません。

その努力は患者さん自身の生活の質を高く維持して、少しでも健康的な人生を送るために必要ですが、同時に、急性症状の出現を減らすことができれば、国民総医療費の削減にもつながることだからです。というわけで「せやけどオッチャン、アンバイ気い使うて、検診もバッチリ受けてやね、細く長く生きたってや。奥さんほんまに喜ぶで。」が慢性病への正しい対処なのです。

お知らせ

ゴールデンウイーク中は、カレンダーどおりの休診となります。 定期内服の必要な患者さんは、薬が途切れないように確認してください。当院休診中に受診の必要が生じた方は、宗像医師会病院をご利用ください。暖かくなると食中毒が増えます。例年GW明けに多くなります。生ものの摂取にはとくにご注意ください。生鮮食料品では賞味期限の確認を忘れず、 調理には十分な加熱を心がけましょう。

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