アメリカ大リーグで、日本人選手の活躍が目立ちます。体格的には、すでに欧米選手に並ぶ人が多くなっていますが、スポーツの分野でも最後はメンタルな部分が勝敗に関わるようです。精神力でも負けない日本人選手がもっと増えて欲しいものですね。
こどもの病気の診かたと看かた(49)梅雨どきに多い病気
夏が近づくと、高温多湿の日本列島は、寝苦しい日、蒸し暑い日の繰り返しになります。目には見えませんが、体調を維持するための自律神経や内分泌系の負担がふえます。ゴールデンウイーク明けは、まさにそのような季節。
そこに新学期の疲れや、運動会などの行事が重なると、どのクラスにも体調不良を訴える児童・生徒が増えてきます。朝起きられない、朝食がとれない、ひんぱんに立ちくらみやめまいを起す、とつぜんお腹が痛くなる、頭が痛い、吐き気がする、階段の昇降がきつい、まっすぐ机に座れない…。
私自身、中学から高校にかけてずっと、「全身のだるさ、頭痛、突然の腹痛、朝自力で起きられない、食欲がない、昼寝をすると金縛りになる、夕方から夜だけ別人のように元気…」そんな日々を過ごしていました。
医学を学ぶようになって初めて、私はそれが自分だけの症状ではなく、結構ありふれた普遍的な病気であることを知りました。 「起立性調節障害」という体質性の病気で、高学年児童の3~4%にみられます。小児の自律神経失調症と考えればわかりやすいでしょう。
この体質の人は、神経と筋肉との連絡がときどきうまくいかないようで、神経の端っこから筋肉に向けて放出されるノルアドレナリンという連絡役のホルモンの分泌が気まぐれなのです。
このホルモン、興奮するとたくさん出るので、好きなことなら考えただけで筋肉はスムーズに動くのですが、「今日は町内の草むしりだ、あーあ」と、思った瞬間に、出が悪くなり(見てきたようなことを書いて済みません)、ぐにゃりと力が抜け、「青ナマコの布団蒸し状態」になってしまうのです。
授業中など一定の姿勢を長くとりつづけると、血液が下半身にたまって、脳貧血となり、保健室へ直行の生徒さんもいます。こんな体質の人でも、適切な治療を受ければ、症状も消え、普通に活動できるようになります。
こどもの病気の診かたと看かた(50)発熱時の対応
夏カゼと思われる患者さんが増えつつあります。かなり高熱をだすこどもさんもいますので、毎日診療が終わる頃になると、解熱剤(げねつざい)を使ってよいかどうか、といった問い合わせが多くなります。
解熱剤の目的は、高熱を平らにすることではありません。食べる・飲むこと、眠ること、トイレに行ったり痛みを訴えるなど、喋って動く力、それら全身状態のバロメータをなるべく良い状態にキープすること、それこそが解熱剤の使用目的なのです。
だから39℃の発熱があっても、自分で台所にきて「あつい、お茶!」などと言えるうちは、使用せずに様子を見てもかまいません。必要ないでしょう。
「もう少しお茶飲んだら、きっとお熱も下がるよね。」とおでこに手をあてながら話しかけ、ゆったりした衣服に着替えさせて、そっと横たえ、そばにいて、優しくじっと見守るだけで、数時間で解熱することも少なくありません。注意すべきは、小さな声で。動作も静かに、ドタバタしない。
こどもにとっては親がそばにいてくれること、安心を与えてくれることが大切なので、「39℃!ンマー大変!」などと、怒髪天を抜く形相で電話をかけまくったとしても、それは何のプラスにもならないのです。
お茶が飲めて喋って、動き回れるのであれば、全身状態のバロメータは、良い状態にキープされている。その発熱は、「困った症状」ではありません。
しかし、高熱のためにぐったりして、水分もほとんど飲めない状態や、トイレにも行けない、あるいは排尿がない、赤ちゃんの場合ですと、笑わない、泣声が弱い、などというのは「困った症状」と考えます。 それは「食う・ねる・あそぶ」つまり全身状態のバロメータが悪いから。
そういう時に、手持ちの解熱剤を使うべきかどうか迷う必要はありません。恐る恐る使ってみたら、一晩ぐっすり眠れて良かったという体験も少なくないでしょう。解熱剤は、痛みを和らげる作用も合わせもっていますから、発熱の時だけでなく、中耳炎などで痛みを訴える場合にも使用できます。
少しでも下がったら、ぐずぐずせずに水分を与えます。吐き気がある場合には、おちょこの半分程度を30分おきに。待つ忍耐力も大事です。