ふくろうブログ

2002.07.01 ふくろう通信

一木こどもクリニック便り 西暦2002年7月(通算67号)

サッカーワールドカップも終わって、もうすぐ夏休み。今年は蜂の巣が低いところにつくられているので台風の直撃が多く、天候異変の荒れ模様になる予感がします。

こどもの病気の診かたと看かた(82)夏休みと気管支喘息

夏は、プール・海水浴・川遊び(どれも疲れやすい)、花火・蚊取線香・お墓参り(お線香)・バーベキュー・里帰り(客用布団)の季節。
これらはいずれも、気管支喘息の発作を起こしやすい条件になります。

気管支喘息のひとでは、気管支の粘膜が煙やホコリなどの刺激にとても過敏な状態になっています。なぜ過敏になっているかと言えば、気管支粘膜に慢性的なアレルギー性の炎症が起こっているからです。

なぜ慢性的な炎症が起こるようになったのか、残念ながらその原因はまだ解明されていません。ともかく、慢性的な炎症があるために、些細なきっかけでも、その炎症が一気に悪化して、発作になるわけです。

いったん発作がおこってしまうと、息苦しいので日常生活に支障をきたし、症状を抑え込むためにたくさんの薬が必要になります。発作を起こさないように予防しておけば薬は少量で済み、日常生活も乱されません。

喘息の発作が起こらないように予防するには、気管支粘膜の慢性炎症を抑え込む必要があります。予防的治療としては以下の方法が主流です。

①アレルギー反応(特定の刺激が来たときに過剰に反応すること)を抑え込む薬を、発作がないときでも常時使用しておく。
→ インタール吸入や抗アレルギー薬の内服など

②でこぼこに荒れた気管支の粘膜(医学用語で“粘膜の炎症”と言います)を、なめらかに整地する薬を毎日吸入する。
→ 吸入ステロイド療法(アレルギー反応も強力に抑える)

これらの予防的治療にもちいる薬をコントローラーと言います。
予防的治療を長く継続しても、それでも発作が起こることはあります。
その場合、発作を抑える対症療法薬(リリーバーと言う)の気管支拡張剤を吸入、内服、貼り薬などで使い、とにかく発作をきりぬけます。

発作のたびに気管支粘膜が荒れますから、予防的治療で発作をなるべくさけるようにすれば、次の発作が起こりにくくなります。
気管支喘息では、予防的治療が主で、発作の治療は従にすぎません。

予防的治療を続けながら、ひたすら気管支の成熟完成を待ちます。
体格がおとな並になってもなお喘息発作を起こしている子どもさんでは、残念ながら成人後もずっと喘息から免れない可能性が高くなります。

成長途上にある子どもさんでは、気管支粘膜の炎症が治ってしまう可能性も十分に望めるので、小児期こそ喘息治療の絶好のチャンスなのです。
2年から3年くらいは予防的治療を継続したほうがよい結果になります。
夏休みを思いきり遊ぶためにも、一日も早く予防的治療を始めましょう

こどもの病気の診かたと看かた(83)とびひのケアー

高温で湿潤な日本の夏は、子どもさんにとって“あせも”や“とびひ”など、皮膚病との戦いの季節でもあります。
黄色ブドウ球菌や化膿性連鎖球菌(いわゆる溶連菌)が原因となります。

抗生物質の内服と抗生物質入り軟膏の外用(つけ薬)とが“とびひ”治療の2本柱ですが、近頃は、抗生物質に抵抗性の黄色ブドウ球菌による“とびひ”の増加が問題となっています。菌の方が薬よりも賢いわけですね。

抗生物質をだらだら使用していると、菌には必ず“慣れ”が生じます。私は“とびひ”治療での抗生物質使用期間は5日~10日に限定し、強力な助っ人を治療に加えます。それが、酸性電解水(超酸化水)です。

この強力な助っ人のおかげで、入浴制限はほとんど必要ありません。
むしろどんどん入浴させて、よく汗や皮膚の汚れを落とすようにします。入浴後に、酸性電解水(超酸化水)で患部を洗浄し、乾いてから、抗生物質を含む軟膏やクリームを外側から内側に向けて塗ります。

アトピー性皮膚炎などが下地にある子どもさんでは、眠りが浅くて無意識に掻いているうちに、“とびひ”が広がってしまうことが多いので、ぐっすり眠れるように、痒み止めのお薬を使うこともあります。
お子さんの“とびひ”が治らない悩みで不眠になることもないでしょう。

あとがき

寝苦しい夜が多くなってきました。寝冷えも増えます。ご注意ください。

ふくろうブログTOPへ