ふくろうブログ

2003.04.01 ふくろう通信

一木こどもクリニック便り 西暦2003年4月(通算76号)

今春、当地では春一番が吹かなかったおかげで、花粉症の患者さんには朗報でした。しかし、家屋の内外とも環境汚染は急速に進行していて、日本人の3割が何らかのアレルギー性鼻炎。内訳は8割がハウスダスト過敏症で、残る2割が花粉症だそうです。

換気をすると花粉が侵入し、窓を閉め切るとハウスダストが増えます。ホルムアルデヒドなどの揮発性有機物質によるシックハウス・シックスクール症候群も知られています。わが国は、心身ともに安らぐ住宅環境がなかなか得にくい国家なのでしょうか。

こどもの病気の診かたと看かた (103)小児の慢性副鼻腔炎

慢性の副鼻腔炎(ふくびくうえん)は、鼻アレルギーのある小児の70%に合併します。鼻アレルギーがなくても、かぜがこじれて副鼻腔の炎症が慢性化することもあります。

昔多かったのは、後者の非アレルギー型。青バナがいつも棒のように流れていました。
最近は、このタイプは減って、かわりにアレルギー型の副鼻腔炎が増えています。
こちらは青バナがないので、一見それとわかりにくく、見落とされやすい状態です。

どちらも症状は、鼻づまり、寝てからのせき込み、頭が重い感じ、頭痛、など。
とくに夜中のせき込みは、気管支炎など呼吸器の病気とまちがわれやすいのです。

以前は、副鼻腔炎の治療といえば、炎症をおこしている副鼻腔を洗浄すること、それをくりかえしても改善しない場合には、手術の適応とされていました。

ところが、近年、慢性副鼻腔炎の治療は大きく変化してきました。

マクロライド系の抗生物質を普通の半量で、3ヶ月間、毎日内服します。耳鼻咽喉科では、このマクロライド少量長期療法は、確立された治療法として実践されています。
とくに成人よりも小児で、より有効性が高いことが報告されています。

いわゆる抗菌剤としての作用を期待して使うのではなく、菌によって荒らされた粘膜の炎症をコントロールし、生理的な機能を回復させるのに有効なのです。

鼻アレルギーが主である患者さんには有効性が低く、もっとも高い効果が期待できるのは、きたない鼻汁がのどの奥にたまっている蓄膿型です。

慢性副鼻腔炎で耳鼻咽喉科に通院すると、同じ抗生物質を延々と処方されるけれど、発育途中の子どもの体に悪いことはないのか、というお尋ねをときどき受けます。

ご心配はもっともですが、これまで有害な副作用は確認されていません。
この治療法は、決して根拠のない治療ではなく、慢性副鼻腔炎の治療法としては、現在もっとも優れた治療法です。安心して治療を継続されることをおすすめします。

こどもの病気の診かたと看かた (104)ヘアカラーの問題

髪を染めるカラーリングが流行していますが、「染毛剤は有毒物質のカクテル」と言われるほど多くの健康障害をひき起こす事実をご存知でしょうか?
以下は、「教育医事新聞2003年3月25日号」よりのご紹介です。

染毛剤の毒性には大きく2つがあります。
① 使用した本人の健康障害 → 発がん性、接触性皮膚炎(かぶれ)、アレルギー
② 次世代への影響     → 環境ホルモン作用(女性ホルモンと同じ作用)
妊婦が使用すれば、胎児にいろいろ有害な異常を起こすことが予想されます。

カラーリングは日常生活に彩りを添え、生活を楽しくしてくれますが、使用している本人の健康を害するだけでなく、新しい生命にも異常を起こすとしたら、小児科医の仕事にもかかわってくる問題です。マスコミでも取り上げられるようになるでしょう。

こどもの病気の診かたと看かた (105)戦争と環境汚染と健康被害

イラクでの戦争が現実になって、連日、環境破壊が報道されています。油井に放火したことによる大気汚染は、当事者国だけでなく近隣諸国にまで影響を及ぼします。

建造物破壊による瓦礫・粉塵の吸引がもたらす現場での呼吸器障害、また戦火を逃れるために、地下壕で長期間生活することによる健康被害も発生します。

さらには、水や生鮮食料品の絶対的不足、ライフラインの破壊、砲弾として使用される劣化ウラン弾による発がん性の問題、医療物資・医療人員の不足…何もかもの不足。
一刻も早く無謀な戦争が終結し、国連の場で平和的に解決することを祈りましょう。

こどもの病気の診かたと看かた (106)宮本武蔵とセルフカウンセリング

二天流剣法の祖として多くの剣客と戦った武蔵ですが、神や仏には頼らず、彼が頼りにしたのは自分自身だけだったとか。(実は、NHKの大河ドラマで知りました。)
それが本当なら、彼こそはセルフカウンセリングの元祖ともいうべき存在でしょう。

武蔵さんのお仕事は、武道修行とはいえ、結果的に他人の命を奪うこと。
勝負に勝ったとしても、やがて必ず自己嫌悪に陥ります。勝ち続けるには、自己嫌悪から脱却できねばならず、自分を癒しつづけることがどうしても必要になります。

自分自身を最後の拠りどころとして信じることができる。
カウンセリングの究極目標は、このことを悩む人に分ってもらうことにあるのです。

あとがき

4年間当院のカウンセラーとして、多くのこどもとご家族の心理相談を担当されてこられた入江 真之先生が退職され、新たに下田 芳幸先生が当院の心理相談担当に加わります。福永 聡子、杉本 亜美の両先生とともに、心理士3名態勢の一翼を担って、こどものメンタルヘルスケアーに活躍されることを期待します。なお今月より宗像市と宗像郡玄海町が合併して「宗像市」となりました。

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