冬の病気といえばインフルエンザが代表的です。今回のお話はインフルエンザが中心ですが、その対策は他のかぜにも通じます。
インフルエンザウイルスは、患者さんのくしゃみや咳などによって、ハナミズやタン、唾液の中にまじって、体外に出されます。
体外に出されたインフルエンザウイルスは、ハナミズ、タン、唾液の乾燥とともに舞い上がり、チリやホコリのように、小さな粒子として空気中をただようことになります。
エアコンやファンヒーターなどによって、空気の対流がおこっている空間では、このようにして、感染力をもった粒子が一日中、舞い続けることになります。
病気をもらう人の側から考えますと、のどの粘膜が乾燥すると危険、ということにな ります。朝起きたときにのどが痛い、というのは部屋の空気が乾燥しているからです。
のどの粘膜が乾燥した状態で、人ごみの中 にでていくと、インフルエンザだけでなく、いろいろな病原体にやられやすくなります。
もっとも危険なのは、病院の待合室、通勤 通学の電車、スーパー、人ごみで身動きで きない初詣の神社などです。
病院を受診される方は、濡れマスクやタオルで口と鼻をおおって待つようにしてください。普通のマスクは予防になりません。
インフルエンザウイルスはマスクを簡単に通ります。乾燥には強いが湿度が高いと感染力が落ちるので、濡れタオルが有効です。
のどの粘膜の乾燥を防ぐために、コンビニや銀行に行くときにも濡れタオルや濡れマスクで、強盗のようなスタイルで出入りすると、ウイルスをもらいにくくなります。
外出から帰ったらよく手洗いをし、ぬるい緑茶や紅茶(2番茶、3番茶で十分)でうがいをします。入浴の時は、カバさんのように鼻の穴だけを水面にだして、ゆっくり呼吸し、蒸気を十分に吸入します。
小さいこどもさんでは、蒸しタオルで顔をふきます。鼻や口から湿った蒸気を送り込んで、粘膜を保護してやるのです。お茶でうがいできる年齢のこどもさんでは、毎日ガラガラペーの習慣をつけておきましょう。
寝室やリビングルームの湿度は50~60%を保つようにします。
最近は高気密高断熱の住宅が増えつつありますが、旧来の工法による家屋では、おもに夏の暑気・湿気対策が中心で、冬は乾燥して寒いのが普通です。
このような住宅では、冬期は壁ぎわの湿度は高いのですが、暖房器具による空気の対流をうける部屋の中心部は乾燥しがちです。
そこで部屋の加湿を考えてみましょう。 洗濯物を吊るす方法では、室温が下がりすぎて冷えが強くなるため冬は不向きです。
加湿器は寝具も湿る、さらなる結露をおこしやすい、数日間使用しないと水タンク内にカビが発生し、次回使用時に、そのカビを飛散させるなどあまり勧められません。
お勧めしたいのは、バスタオルをロールケーキ状に巻いてポリバケツにつっこみ、それに水をかけておくか、鉢植えのグリーンを水皿にのせ、部屋の隅におく方法です。
暖かいリビングから寒い寝室に入るとなかなか寝付けないので、寝る時だけヒーターを入れることがあります。それはどうか?
冬期には放射冷却が起こり易く、夜明けに一気に冷え込んで、エアコンで暖かい寝がけと寒い起きがけで室温差がひろがります。
夜明けに吸う空気の温度が下がれば、体温との温度差も拡大し、それが気管支にとっては刺激になり、夜明けに咳き込む、という現象が毎日くり返されるようになります。
乾燥、気温低下に関係した夜明けの咳き込みを減らすには、明け方にエアコンが入るようにタイマーを設定し、夜明けの急な室温低下を防ぐと有効なことがあります。
ところでインフルエンザの予防に一番効果的なのは、何といっても予防接種。
最近まで、インフルエンザワクチンというものは副作用ばかりで効果なし、とマスコミから目のかたきにされていました。
しかし昨年頃から、マスコミの論調も変わってきました。とくに高齢者の肺炎予防と、6才未満の乳幼児における脳炎・脳症予防の観点から、これらハイリスク年齢の人口に対する早めの接種が勧められています。
ところが今年は、連日新聞などで報道されているように、ワクチンがどこかに姿を消したらしく、注文しても入手困難がつづき、きわめて異常な状態なのです。
今シーズン、希望しても予防接種が受けられなかった方は、栄養、保温、十分な睡眠と睡眠環境の改善に注意して体力を維持し、もしかかったら早目の受診をお勧めします。
A型インフルエンザでは、初期にはアマンタジンという薬が有効ですし、種々の漢方薬も効果があります。食事・睡眠が困難な場合には点滴が必要になることもあります。
受診困難な方は安静臥床します。解熱剤をなるべく我慢して水分を取り続け、汗をどんどんかき、どんどん排尿します。おしぼりで何回も体を拭きます。汗のでない初期は市販の葛根湯(かっこんとう)も有効です。
夜間に発熱してあわてることが多いのですが、夜間には急患センターしか開いていません。このような場合どう対応すべきか?
高熱でも、意識があって、はっきりした応答がある場合には、上記のように、家庭でできる処置をしながら様子を観察し、翌日の受診で差し支えありません。
しかし、高熱で異常に興奮した状態や、逆にぐったりした表情のこども、あるいは食事をしなくなった高齢者では注意が必要です。このような場合には、夜間でも急患センターを受診して診察を受けてください。