例年、2学期が始まって数週間すると、立派な体格なのに異常にきつがるこどもさんが増えてきます。とくに小学校高学年から中学生に多いのですが、体がぐにゃぐにゃ状態で診察中もまっすぐ座れないほどです。
朝起きられない、午前中は食欲がない、授業中に机にうつぶせになってしまう、吐き気がする、顔色が悪い、わずかな時間でも立つとめまいがする、しょっちゅう立ちくらみがする、そして…、夕方から夜はメチャメチャ元気。毎日これのくり返し。日曜日は元気。
こういう体質を起立性調節障害(きりつせい ちょうせつ しょうがい)と名づけています。自律神経失調症のひとつと考えられます。
前の晩に、「明日は絶対起してよ、遅刻したらおおごとなんやけん」などと神妙に言いますが、朝になれば空約束だったことが分かります。母親が枕元で何回声をかけても、生返事だけで、起きてくることはまずありません。それどころか、悪態をついて、ふとんにしがみつき抵抗します。
こういう子どもさんをふとんから引きずり出すにはコツが要ります。まず目の上に冷たいおしぼりをどさっと置きます。次に、両方のふくらはぎをしっかりつかみギュッギュッとくり返し握ります。しっかり握っていないと相手も必死で抵抗するので蹴られます。
朝から親子で激しい戦いですが、程度のひどい起立性調節障害の子どもさんでは、そうならざるを得ません。起きられないために遅刻を重ねて、とうとう不登校になってしまうことさえあるからです。
もちろんそういう荒ワザを行使しても異存はない、ということについて、本人が冷静に判断できる時に、親子で十分話し合っておくことが大切。
母親に悪態をつく子どもさんに対しては、父親の出番です。「おまえのために、お母さんが毎朝やってくれているのだから感謝しろ。お母さんに文句を言うなら、お父さんが起こそうか?」と穏やかに言います。体格で父親の方が勝っている年齢までに、存在感を示しておきましょう。
その子どもさんが現在もっともハマッている趣味の話題を耳元でくり返すのも効果的。ノルアドレナリンがたくさんでるとサッと起きられます。
どういう関わり方をするにせよ、両親は自分のために一所懸命に対応してくれている、と確信できればこどもは悪態をつきません。両親の連携がとても大切という意味で、これは親が試されている病気なのです。