ふくろうブログ

2002.10.02 事故とやけど

習慣的思いこみによる重大事故

30年ほど昔になりますが、自動車メーカーのA社だけ、マニュアル車における変速ギアの配列が他社の車と違っていました。A社の車で運転練習していた友人は、試験では他社の車だったため、踏切でギアをいつも通り低速にしたつもりがバックに入り、その場で落第になったそうです。

私が医師になった頃は、麻酔器の操作ミスによる麻酔事故が相次いでいました。麻酔器には①酸素(O2:緑色のバルブ)、②笑気(N2O:青色のバルブ)、③圧縮空気(Air:薄茶色のバルブ)の3ケのバルブとホースがあります。

現在でこそ、この色は各社統一されていますが、以前は酸素だけが緑で、残る2系統の色はメーカーごとにまちまちでした。大学病院の機械に慣れた医師が出張先の病院で、不慣れな別メーカーの機械を操作するときに、うっかりミスが誘発されても何らおかしくない状況だったのです。

当院のトイレや流しに使用されている水道栓は、レバーを上げると止まり、下げると水が出ます。ところが自宅の手元栓はその逆なので、最初の頃はクリニックでも自宅でも、しょっちゅう失敗をしました。
最近は慎重に操作をしていますが、それでも時々うっかり間違えます。

水道の操作では重大事故にはならないでしょうが、麻酔器や車の変速器では、一歩間違えると重大な事故に直結しかねません。それらの操作は“慣れ”の延長で行われる、つまり習慣的思い込み操作が多く、本人の不注意だけを問うことは決して問題の本質的解決にはならないからです。

私たちの身の回りを点検してみると、基本的仕様部分のデザイン不統一にもとづく、事故誘発可能性を秘めた工業製品がかなり多いのではないかと思われます。

生命の安全性に結びつきかねない製品では、基本仕様に限っては、各社の個別デザインをぜひ統一してもらいたいものですね。幼児の玩具などにも同じことがいえるように思います。

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