図1を見て下さい。急性感染症の例として、インフルエンザを考えてみましょう。あるいは、はしか(麻疹)でもよいのですが、ヒトからヒトにうつる(感染する)病気の特徴として、病原体が生体に侵入してから、病気として姿を現す(発症)までに、それぞれの病原体ごとに定まった、無症状の期間が経過します。この期間を潜伏期といいます。 潜伏期が過ぎると発症します。これから病気が目に見える姿かたちをとるわけですが、病原体と生体との力関係で、以後の経過が決まります。すなわち初めは、病気の勢い(病勢)が強く、日に日に悪化してゆきます。そしてもっとも病勢の強い極期を迎えます。昔から、この極期をあらわすのに「今夜あたりがヤマです」とか、「今が峠です」とか言っておりました。
さて、インフルエンザの一般的な経過を一週間としますと、前半4日が上り坂で、後半3日が下り坂、峠は、第4日ということになります。ところが、興味深いことに、病気の勢いとしては、上り坂であるにもかかわらず、発熱などの症状が、いったん治まったように見えることがあります。 しかし病勢はまだ上向きですから、1~2日すると再び発熱します。みかけの解熱(げねつ)時期と病勢の沈静時期とが一致していないのです。ふくろう通信1号の付録”インフルエンザにかかった時に注意すること”をご覧下さい。はしかの場合にもよく似た現象がおこります。最初に38℃ くらいの熱と、鼻水や目ヤニ、軽いセキがでます。2日ほどで、いったん解熱するのですが、この解熱は見せかけで、すぐに今度はもっと高い熱がでます。それと同時に全身に発疹が出ます。セキは一層ひどくなり、タンがからみ、目ヤニ、鼻水などの水物もさらにひどくズルズルと出ます。これらの水物のことをカタル症状と呼びます。カタルとは、元来ギリシャ語で、「流れる」という意味です。大体3~5日くらい高熱が続いてようやく本当に解熱します。