ふくろうブログ

かぜ流行時の待合室風景

これまで他の医院を受診されていた方が、当院を初めて受診されると、受付での対応がかなり異なることに気付かれるはずです。

「熱の高い患者さんは申し出てください」という掲示がたいていの医院で見られますが、当院ではありません。
予防接種の時以外は「お熱をはかってください」と体温計をだすこともありません。
熱があるか否かは、原因を考える上では意味がありますが、高いか低いかは病気の本質、程度、予後とは関係ないのです。

私ども開業医にとって、もっとも大事なことは、重症者を見落とさないことです。
多くの患者さんの中にまぎれ込んでいる重症者を確実にひろいあげ、十分なケアーのできる施設に紹介すること。そのために毎日、全神経を集中して診療しているのです。 つまり、程度に応じた選り分け作業です。

今、約100人の患者さんが受診されたと仮定しましょう。夏場ですとその内訳は大体、
1) 入院必要者(急性の重症者):0~3名
2) 点滴必要者(急性の中程度):5~10名
3) 内服で経過観察(急性軽症者):60名
4) 生活指導・管理中の慢性疾患:約30名(喘息、アトピー性皮膚炎、内分泌疾患、心身症など)

これがインフルエンザのシーズンになりますと、1日150名として、
1) 2~5名
2) 10~25名
3) 100名
4) 30名
のように変化します。4)は変化しませんが、1)~3)、すなわち急性疾患が増えて、入院群(1)や点滴群(2)が増えるのです。ここで(1)を見逃さないように注意しているのです。

体温の高い患者さんが、イコール重症であるのなら、体温計さえあれば、診察抜きでも正確に重症度が測れるはずですが、残念ながら体温の高低はあてになりません。
当院では、次の1)~8)に該当する重症者もしくはハイリスク(高危険群)の患者さんを優先的に診察する方針にしております。
そのような方が見当たらない場合には、高熱の有無にかかわらず、名前を書かれた順番に診察を受けていただくことになります。
早く受診されてもノートに名前を記入されなければ、いつまで待っても呼ばれません。 時々、名前の記入を忘れる方がおられますので、ノートのチェックをお願いします。

診察時間の目安ですが、1人4分くらいです。救急車が割り込んだり、ひきつけたり、呼吸が苦しくなったかたの順番をくりあげたりするため、番狂わせも起こりえます。
受診された時に待合中の方が数名しかおられなくても、まだ診察のすんでいない方が30人残っていたとしたら、30x4=120分は待たされることになるはずです。お名前を書かれて一度帰宅されていたかたが頃合いを見計らって戻ってこられるからです。
ご自宅が遠方の方は、待ち時間に買物をされたりと、皆さんいろいろと工夫をされておられます。初診の方は、これらの事情が分からないでしょうが、ご了解ください。

さて、以下の1)~8)に該当する患者さんは、日頃、要注意例として、職員に特別の配慮を指示しているケースです。特別扱いの理由をご理解いただけることと思います。

1) ぐったりして、首が倒れている患者
2) 親が横抱きにしていて、患者さんもほとんど動いていない場合(声もでない)
3) 呼吸困難(喘息、クループ)、変な呼吸
4) 嘔吐や高熱で顔色が青い場合。高熱でも顔色が赤い場合は、通常の順番待ち
5) ひきつけた場合
6) ダウン症、脳性麻痺など、先天的な異常のある場合(ハイリスク患者)
7) 首がすわっていない新生児、乳児
8)ステロイド内服者など免疫の弱い状態

インフルエンザのように高熱がつづく病気では、全員が重症のように見えます。しかし本当に重症あるいは注意が必要なのは、この1)~8)のような患者さんなのです。
もちろん急性疾患の重症者を優先するといっても、長期管理中の慢性疾患の患者さんを軽く考えているわけではありません。
某ビールメーカーのコマーシャルのように「発泡酒のお客さまも大切、ビールのお客さまも大切」というわけです。
むしろ、生活指導の必要な慢性疾患こそ、定期的な受診が大切で、ゆっくりした時間でていねいに経過を伺い、コントロールのよし悪しをぎん味する必要があるのです。
ただ急性疾患の流行時には、狭い待合室にいるとうつされる可能性が高くなります。また受診者の絶対数が多くなりますと1人あたりの患者さんにかける時間が少なくなり、長期的な管理に不可欠の、じゅうぶんな時間をかけた説明ができなくなります。
そこでコントロールの良好な慢性疾患の患者さんについては、急性疾患の流行時には、なるべく受診を控えていただき、おくすりの処方のみを続けて、春を待っていただく、という基本方針で臨んでおります。

寒波が到来すると、途端に患者さんが激増します。混雑緩和のために、以上の方針をご理解いただきたくお願い申し上げます。

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